あの方から借りたCDを2枚続けて聞いている。
心が痛い…これをサビシイ、というの?
僕は、「さびしい」と「好き」の違いを問うた。
男は、「さびしい」ときに一緒にいたいのが「好き」だと答えた。
僕が最も避けたい答えだった。
男はそんなこと、知るはずもないのに
君は僕のことを分かってないって
知るはずのないことを分かってるはずもないのに
そんな僕の心を責めるように美しく切実な声で
あの方の愛する美しく切実な言葉が
スピーカーからハリカモシカの毛を1本だけ携帯させる
他人の直視から身を守るための
不必要に近づく者を攻撃するハリカモシカの針

ああ、君の置いて行った悲しみのせいで、麻雀に負けてしまったじゃない…
あの方は、汚れてもまだ、
汚れたからこそかもしれないが
繊細な音楽を愛している。

僕は、汚れることを求め続け、一種の異常性を愛し、
自分が心情の吐露になろうとしていた
僕の心情を吐露するのではなく、僕が心情の吐露の結晶物になろうとしていた
そんな僕に、あの方は「逃げる癖、やめような」と言った
地下鉄のホームを、顔を赤くして、けれどしっかりとした足取りで、
あの方は去って行ったのだろう
うつむいていた僕は、何も知らない

千夜一夜の夢
うたかたに消えるさだめでも
君を抱きしめよう
時が全て燃え尽きても
離しはしないさ このまま